ひとり

3/5
前へ
/35ページ
次へ
夏が途方に暮れて教室の出口をみていたら、帰宅時間の騒がしさも静まりつつあった教室に、寄せ返しのように大きな声が響いた。 「フーミーカー、かえろ!」 驚いて思わず振り返った夏の目に、クラスメートから手を引っ張られ苦笑を浮かべる女子の姿が飛び込んだ。 相沢史佳。 溜め息が出るくらいキレイなストレートヘアを肩まで伸ばした、モデルみたいに可愛い子。その折れそうなくらい細い手を引かれるのに合わせて、相沢が笑いながらイヤイヤと首を振ると、サラサラした髪が制服の肩の上で川みたいに形を変えて流れる。 一言でいって、絵になる美少女だ。何をしててもドラマのワンシーンじみて映る。 しかし夏が息をのまされたのは、相沢という同級生の神秘的な美しさではなかった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加