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下校時間をいくらか過ぎても、夏の盛りの日は高い。寸足らずの影法師を追いかけて、夏は自分の名前の季節を寂しく歩いた。
トボトボ足を進めるたびに空しい気分が肩に重さを増していく。
誰かと一緒に帰っていても、言葉の上手くない夏は積極的にものをいうほうではないけれど、それでもあんなことのあとに一人きりの帰り道は心細くて寒かった。
夕方へ差し掛かる太陽光はいまだ刺すようなのに、夏はうっすら汗の湿る手をぎゅっと握り込む。少しでも温かみを逃がさぬようにとでもいうみたく。
陽炎の立つアスファルトの反射熱がそんな夏を灼いた。
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