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夏は、孤立しているつもりはない。どのグループにも所属していないだけで、クラスの誰とでもほぼ均等に話すし、誰とでも遊ぶ。
相沢史佳もそうだ。どのグループにも入らず、特別親しい友達もいない感じで、でもひとりでいることはほとんどない。
それでもあえてそれを「孤独」となぞらえて表現するなら、夏は「孤立」している。
対する相沢は、「孤高」の存在だ。
いつもみんなに囲まれ、注目を受けていて、なのに誰にも肩入れしないでいつも自然体の自分でいる。
夏はといえば、そういう人の輪を構成する、いわば壁の一部。あっても気にならないし、なくても気にされない。
例えばの話、誰かがお菓子を教室に持ち込んだとき、まずはじめに声がかかるのが相沢だ。で、みんなに一通り配り終わったあと、思い出したように「あんたも食べる?」と、やっと声がかかるのが夏だ。
例えばの話、体育でチームを作ることになったとき、最初に引っ張りだこになるのが相沢で、最後辺り人数合わせに呼ばれるのが夏だ。しかも、聞いてもいないのに「史佳取られちゃってさあ」なんて一言を面と向かっていわれてしまう。言外に、しょうがないからあんたでいいや、という意味を夏は聞かずにいられない。
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