第一章『王家の血(キング・ブラット)』

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 魔力が満ちるこの世界はその魔力を利用する文化が発達し、大体のものは魔力で動く科学が発展した。人も魔力を用いて魔法を扱うなど、魔力は生活になくてはならないものになっている。だが、誰でも最初から魔法を扱えるわけではない。そのため学校には魔法学が存在する。そこで魔法を収め、子どもたちは大人になっていく。そしてここは魔法大国の一つで、世界に誇る魔法学校が存在する王国『グローリア』。そして賢者の一人である『シリス』が創設した魔法学校が『』。その学校の一室で、賢者である『』と一人の若い女性が話をしていた。 「妾を呼び出すとはいい度胸じゃな。そんなだから貴様は変わり者とよばれるのだ」 「数十年ぶりだと言うのに、相変わらずつれん態度だのう」 「黙れ老いぼれ。今日来たのは気まぐれじゃ。十年もお前がしつこく誘ってくるからな」 「ほほほ、この年になっても、お前以上に美しい女性にはお目にかかってないものでね」   二人の間に妙な空気が流れている。 「そろそろいいだろ。妾を呼んだ真意を話せ。ただ茶に誘うだけなら、わざわざ貴様が直々に来たりはすまい」 「ほほほ。そう焦るな。…お前はこの国の王をどう見る?」 「グローリア王か? 代々天才しか生まれん血筋と聞くが、実際はどうかな」 「グローリア王の子の一人が、この学校を一年で卒業していきおった」 「ほう、なら噂は本当らしいな」 「だがな、それは弟のほうなのだよ」   シリスの言葉に、女性は表情が変わる。 「弟…。上に兄か姉でもいるのか?」 「兄がおるのだが、どうも弟とは違ってのう」  シリスは窓際により、外を眺める。窓からは校舎がよく見えるのだ。 「こっちへ来てお前も見てみよ。…一目でわかるはずじゃ」 「? 何が見えると…」   窓の外に視線を移したとき、女性の表情が険しくなった。椅子から立ちあがり、窓へと依る。
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