第一章『王家の血(キング・ブラット)』

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「あの子か? 確かに妙だ。魔力の流れがおかしい」 「やはりそう思うか? だがなぜか我々『賢者』にしか見えないらしい。この学校の教師には誰も感じ取れんらしくてのう。…王からも見放されている」 「見放す?」 「落ちこぼれなのだよ。最近ではまったく魔法が使えんらしい。知識は豊富で、熱心なのだが、どういうわけか魔力を操れないと」  シリスは自分の席へ戻って腰を下ろす。だが、女性はまだ窓から落ちこぼれと言われた少年の姿を見ていた。休み時間だというのに、一人で本を読んでいる。 「原因はあの魔力の流れなのか?」 「わしにもわからぬからお前を呼んだのだ。他の賢者は忙しくてなかなか来てくれんのでな」 「まるで妾が暇人みたいな言い方じゃな」 「事実であろうに。一人城に閉じこもりおって」  女性は冷たい視線をシリスに向ける。 「まあいい。…ただ、あの子は早めに対処したほうがよいぞ。心に闇が育ち始めている」 「やはりそうか。専門家の意見なら間違いなかろう」 「専門家か。好きで闇の魔法を身につけたわけではないというに。復讐の済んだいま、妾は平穏に暮らせればそれでよい」 「まあそう言わず、ひとつ頼まれてくれぬか? もちろんタダとは言わん」  昼下がりの午後、二人の賢者はひっそりと話を進めていた。
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