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夕日が沈みかける頃、教室で一人の少年が本を読んでいる。名を『シグ・グローリア』この国の王の息子であり、かつては神童とうたわれるほどの天才であった。当時は友達が多く、彼は一人ではなかった。…だが、天才であったシグは何をやってもすぐにできてしまい、いつしか友達はそれを妬むようになり、シグの元を離れていった。だが一人になってもシグは必死に魔法を納めていった。なぜなら王子である自分はいずれは国王にならなければならない。そして、誰よりも父親に認めらえれたかったからだ。だがある時を境に魔法が使えなくなり、父からは見捨てられ、学校でも苛めを受けるようになっていた。
「そんなに本ばかり読んで楽しいか? 妾は嫌いではないが」
「…闇の、女王?」
放課後の校舎、自分以外に誰もいなかったはずの教室。だが、眼の前には確かに一人の女性が立っていた。
「その名で呼ばれるのはあまり好きではないのだがな。闇の支配者も却下じゃ」
「賢者が何のようです?」
「そうきたか、可愛げのない子じゃな。…まあいい、お前は魔法が使えないというのは本当か? 王になるのが嫌で怠けてると違うか?」
シグは本から視線を反らし、女性の眼を見つめる。
「…すまぬ。妾が悪かった」
少年の冷たい視線を見たとき、女性は困ったような表情をする。
(これは、思ったよりも根は深そうじゃのう。シリスめ、ただ妾に押しつけたかっただけではないか?)
シグは再び視線を本へと戻す。
「なぜ魔法書を読む? 魔法が使えないのだろう?」
「使えないのは僕に問題があるからだ。だからどこが悪いのかがわかれば、きっとまた使えるようになる」
「本をよんで答えを探しているのか。…だがな、お前が魔法を使えないのは呪文や魔法陣が間違っているからではないと思うぞ」
さっきまで女性にまったく興味を示していなかったシグだが、先ほどとは違い救いを求めているかのような瞳を女性に向ける。
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