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日が沈んだ頃、シグは寮へと戻る。国外や実家が遠い者は学校の敷地内にある寮で生活しているのだ。シグも、国王から見放されてからはこの寮で生活していた。
「遅かったね。もうすぐ夕飯の時間だよ」
「僕は部屋で食べるよ。食堂に行っても、一人になるだけだし」
「そう」
寮の部屋には一人の少女がいる。あまり愛想は良くない感じだが、この学園では唯一シグに話しかけてくる生徒だ。名は『フィール・ジハール』今は亡き隣国の王の娘である。
「…闇の賢者が来ていたみたいだけど、何かあったの?」
「校長先生が呼んだみたいだよ。…次の長期休みの間、弟子にならないかって言われた」
「そう。…賢者の弟子なんてなかなかなれない。例えそれが闇の賢者でも名誉なことよ」
だが、シグは暗い表情のままベットに横になる。
「…ねえフィール、君から見て僕は幸せなのかな? 僕の両親はちゃんと生きてるんだし」
数年前に争いがあり、その際にフィールの両親はこの世を去っていた。今は身内が国を管理しているらしく、フィールは学校へ通うという形で追い出されたのだ。
「幸せは人それぞれ。…少なくとも、私にはあなたが幸せであるようには見えない」
「そうなのか」
「そう。…私が同じ立場なら、私は反乱をおこすかもしれない」
「フィールは力があるからね。それに、そうは言うけどフィールはそんなことしないよ。フィールが優しいのは、幼馴染なんだからよくわかってる」
フィールも王族の血筋のため、生まれた時から強い力をもっている。魔方には4つの属性があるが、人はそのうちの3つしか扱えないといわれているのだが、そのうちの3つを生まれた時からフィールは扱えるのだ。
「力なんてなければ、争いは起こらない。私の力は争いを生む。闇以外の属性を使えるなんて賢者並みの力。私には過ぎた力よ」
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