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無意識の内に千恵の代わりを求めていた?
そう考えるのが一番効率的で分かりやすい。
きっと最も自然な考えだろう。
だけど……、
まだ胸の奥に引っかかる。
昨夜のあいつの泣き顔が。
俺の服についたゴミを払おうとしたあいつの顔が。
警備員から奪い返した時に俺を見て安心したあいつの顔が。
俺を拒絶したあいつの顔が。
本当に、全て千恵に重ねたものなのだろうか?
そこまで考えて、携帯に着信がきた。
出れば、運転手の山本からで、会社の外で待っているらしい。
了解の返事をして、鞄を持って部屋を出ると、部下達が物珍しそうに俺を見てきた。
恐らくこんな早く帰る俺に驚いているのだろう。
普段は10時位まで残ってるしな。
「お疲れ」
「「お疲れ様でした」」
部下に見送られながらエレベーターに乗り込み、俺は会社を出た。
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