第一章:鏡の中の鏡

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「で、結局あなた達はどういう関係? 双子?」  カップ麺の汁を飲み干した先生が、爪楊枝で歯を弄りながら僕らに問い掛けた。そんな調子だから結婚出来ないんですよ、と口を滑らしかけたが先程のスナップの効いたチョップを思い出したので、閉口した。  それはともかく、先生の問いに答えるべく、僕は手を振りながら口を開く。 「「ドッペルゲンガーです」」 「挙動の一つ一つまで被るのね、あなた達。あと、ベッドの上で食べるのやめてもらえないかしら」  先生に呆れられた! この人にだけはされたくなかった表情部門、第一位。 「ずびしっ」 「「痛っ」」  顔に出してしまったのか、それとも心を読まれたのか、僕と宙は有り難いチョップを頂戴した。また思考が重なったのか……。 「ふぅん」  先生が意味ありげな笑みを浮かべる。なんだ、なんだ? 「間違えた、うふん」 「「……」」  駄目だ、こいつ。早くなんとかしないと。 「やだ、そんな目で見ないでよ。戯れよ、戯れ。……それにしても目を疑っちゃうわね、ほんと」  先生は僕らを交互に見渡し、感心する。そして舌なめずり。  うわぁ、この人思慮が浅過ぎるだろ。考えが駄々漏れだー。きっと頭の中では二人なら二倍美味しいみたいな妄想世界が広がっているんだろう。 「「それじゃあご馳走様でした。もう二度と来ませんので」」  丁寧にお辞儀をして、保健室を後にする。もはや、いちいち被ることに反応するのも億劫だった。 「そんなこと言って、いっつもまた来る癖にー!」  先生の黄色い、いや黄ばんだ声が扉越しに聞こえてくる。  僕らは顔を見合わせ、苦笑する。そして、宙が声に出さずに口パクでありがとうと呟く。素直に言えばいいのにと思う。  だから、僕も宙と同様にどう致しましてと口パクで呟く。お互い素直じゃないね、まったく。  先生の言う通り、きっとまた僕はここにやって来るのだろうなと思いながら、宙の無防備な笑顔を脳内フォルダに保存しておいた。  早くも宙の存在を徐々に許容し始めようとしている自分が、少し憎らしいと思う。
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