第二章:好意と憎悪は紙一重

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「で、結局どうするの?」 「そうね……」  言いつつ、歩き出して適当に屋台の前に移動して物色を始める。宙の食べたい物の前で止まるだろう、と判断を託してのんびりと屋台の前を進む。匂いが強まる、いや近付くことでまぜこぜになっていた香りがそれぞれの個性を発揮してくるようになる。 「綿菓子にします」 「了解。……セレクトが意外と子供っぽいね」 「悪い?」 「悪くないけど」 「そういう貴方の好みは?」 「ベビーカステラ」 「ふ。ガキね」  子供と言うのとガキと言うのでは、何故こうも嘲りの度合いが違うのだろう。と、ぼんやり考えながらお目当ての屋台に顔を覗かせる。宙が照れ隠しに無表情を貫いて、人差し指を中のおじさんに向けてピンと立てる。 「一つ下さい」  「はい、どうもー」と、投げやりな返事をして、まず僕から料金を受け取った。一つ二百円である。こんなもんただの砂糖で原価など十円にも満たないだろうから、ボロ儲けに違いない。お祭り価格恐るべし。  あっという間に砂糖の雲が出来上がって、割箸に巻き付いたそれをおじさんは宙に渡した。
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