第二章:好意と憎悪は紙一重

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 人の流れから外れ、屋台の幟の隅に立ち止まって宙が綿菓子を食べ終えるのを待つことに。僕はそれを正面からジッと鑑賞した。  四口目あたりで、宙の動きが止まった。 「熱い視線を向けられると食べにくいのだけれど」 「いや、普段の仕草とのギャップがあって可愛いなーと」 「ぶふっ」  砂糖雲が一欠片千切れて空を舞う。ゆらゆら揺れて落ちてしまう前に反射的に動いて、口で受け取ってしまった。 「「あ」」  口に入って唾液で溶けていくそれは宙の口が触れたものであって、つまりその行為を端的に表すと  間 接 キ ス。  呆然とその事実を受け止めて、僕は所在なく視線を踊らせて宙は綿菓子で口を塞いだ。  気まずい沈黙。こう、リビドーの固まりのような青春イベントに対して、僕は抗体を持っていないわけで、閉口するしかなかったのだ。
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