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その時。
甲高い音が竜頭蛇尾の勢いで空に上がったかと思うと、傍で太鼓を叩いたかのような腹に響く轟音が鳴った。
僕らは音につられて同時に空を見上げる。
空高くに咲く、色鮮やかな一輪の大花。それは日本の気難しい職人達が作り上げた伝統的な火の芸術だった。
「「綺麗……」」
さっきまでの居心地の悪い雰囲気はとうに吹き飛んで、次々と空に打ち上がっては轟音とともに咲く様に二人並んでただ見惚れた。
光が僕らの顔を照り返す。暗い空を照らし出しては消えていく儚さに魅せられて、束の間の幻想的な雰囲気に呑まれて。
僕らはどちらともなく見つめ合った。
浮気性な僕の目はすぐに視線を外して、長い睫毛やキメ細やかな肌、そして柔らかそうな唇へと目移りする。
花火の轟音に負けないくらい身体の内から大きな鐘の音が響く。胸が、顔が発熱する。
熱い、熱い。
僕を真っ直ぐに見つめていた宙は目をゆっくりと閉じ、餌を待つ小鳥のように顔を少し上向かせた。
真っ白になった頭は考えることを放棄していて、僕は動物的な本能に身を委ねてしまう。
宙の顎に手を添えて、ゆっくりと顔を近付けた。
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