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「――さん、相沢さんっ!」
ノイズを伴って、私の機能が修復される。徐々に鼓膜には周囲のざわめきが、網膜には心配げに覗き込む女生徒の姿が。
「え、ええ……。大丈夫、心配しないで」
今にも救急車でも呼びそうな剣幕の女生徒を宥めつつ、周囲を見回す。
……そうだ。私は彼女らと連れ立って食堂に来たんだった。
時計を見やると、既にお昼休みは残すところあと十分程度で、食堂内はピーク期に比べると人の数が半分ほどに落ち着いていた。
「ほんとに、……大丈夫?」
小柄で気の弱い振る舞いが、小動物を彷彿させる少女の問いに首肯すると、手元にあった水を一息に飲み干した。
喉を冷水が伝い、幾分か気分が楽になる。俯いて伸び切ったうどんを見つめ、それから彼女らの方へ顔を向けた。
「えっと、それで何の用だったかしら?」
私の問いに彼女達は顔を見合せて、それから代表するように例の鳥女が話を切り出した。
「だから、はーちゃんが空くんのことが好きだから、貴方にも協力して欲しいの」
「……協力、ですか」
「そう、協力」
「お言葉ですが、私がその……はーちゃんさん? に協力出来るようなことがあるとは思えないのですが」
私の率直な答えに鳥女は笑顔のまま眉をひそめ、それからすぐに切り返した。
「それじゃあ、はーちゃんが空くんのことが好きってことだけを、念頭に置いて行動してくれるだけでいいから、ね? お願い」
「……はぁ」
「用はそれだけ。それじゃ私達はもう先に上がるね」
鳥女はそう言うと席を立ち、それに続いてはーちゃんとやらともう一人の女生徒が席を立ち、颯爽と食堂を去っていった。
はーちゃんとやらは最後に振り返って、私にぺこりと頭を下げていった。
私はそれに応えず、伸び切ったうどんを啜り、よく噛んで飲み込んでから、頬杖を突いてぼんやりと食堂の天井を見上げた。
「……不味い」
薄汚れた天井の下で伸び切ったうどんを食べることになるとは。と、今更ながら辟易したのであった。
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