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文化祭がいつの間にか数週間後に開催されるほどに日々は過ぎ去っていて、現在。
七限目の五十分間は文化祭でのクラス発表を何にするか、それについてのはなしあいに費やされることになっていた。
各々が所属するグループに分かれて、ああだこうだと楽しげに話し合っている。
そうやって群れでの行動が始まると、私はいつも鞄の中から小説を取り出して自分の時間を謳歌することにしている。別に虐められているわけでも、孤立しているわけではない。断じてない。
誰へとも分からない言い訳を並べつつ、私の意識は活字の海へと潜り始「相沢さん」……ふぁ。
顔を上げずとも声の主が分かってしまうのは良いことなのかどうか。私には眩しい微笑みの爆弾を直視するのは躊躇われて、ただただ本に視線を落とす。集中力を削がれた今、とても読む気にはなれないけど、その場しのぎくらいには役立つでしょう、むしろ役立ってください。
――結局、彼は今日も学校に現れず、私は今日も近松さんと同じ時を過ごしたのだった。くわばら、くわばら。
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