第三章:悪意の理由は善意

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 放課後の帰り道。夕日を背に、私は携帯とのにらめっこに興じていた。秋の高い空は真っ赤な絵の具で塗り潰したようで、空が血に塗れているのかと連想してしまう。  二日続けて学校を休んだ彼からは音沙汰なしで、流石の私も安否が気になってそわそわしてしまう。私ってばお人好しだもの。  閑話休題。心当たりがありそうな人といえば、愛美ちゃんに葵さん。あとは、茜さんくらいかしら。あら……? なんで彼の周りは同年代の男が皆無で女ばかりなのかしら?  まぁ、いいでしょう。この件はいずれ詰問するとして、順に当たってみましょうかね。  この三人のうち誰に電話を掛けるのも気が進まないけれど、致し方ない。取り敢えず、妹君に電話を「ややや、お姉様じゃありませんかっ!」……する必要はなくなったみたいね。 「こんにちはなのです」 「こんに以下略」 「略さないでください!」 「以下略」 「一文字分すら話してもらえなかったっ!」  愛美ちゃんと直接会うのは、あの夏の日以来なのだけれど、すっかり元気になったみたい。陰りのない笑顔を見ると、柄にもなく微笑ましい気持ちになってしまうほどに。
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