第三章:悪意の理由は善意

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「ややや、まさかお姉様と偶然出会えるなんてっ!」 「そんなに喜ぶべきこと?」 「はいっ。なんてったって、あたしの恩人様なのですよ!」  恩人……といっても、彼の妹だから、そして彼に頼まれたから、少し手伝っただけで、大恩を感じる必要はないのだけれど。わざわざ面と向かって言う必要もない、かしら? 「それに、そのナイスなばでぃーにも羨望の眼差しを。じろり」 「いやよ」 「あっははー。そんな露骨に隠さなくたって揉みしだきやしませんよーっ」 「揉みしだく!?」  わきわきと手を開いたり閉じたりしてにじり寄る愛美ちゃんに、身の危険を感じるので先ほどより二歩離れて歩きましょうか。 「ああん。お姉様ったら、つれない反応っ!」 「……どうしてこうなってしまったのかしら」  顔見知りの残念な進化に、いや深化? むしろ真価? に、なんとも言えない気持ちになりつつ、私は真っ直ぐに彼のうちへと向かっていたのだった。んー、うちに帰るはずだったのにねぇ……。
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