第三章:悪意の理由は善意

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 っていうか、あの男には気遣いというものがないのかしら。私がいくら露骨に避けたからって。メールの一つも寄越さないなんてどういう神経してるのかしら。私への忠義が足りてないわ。ああ、そうね。こういうのを無神経というのね。まったく気の効かない男はモテないと昔の偉い人がどれだけ言っていたと思ってるの。まったく、本当にまったく……。あ、でも彼の周りって可愛い妹から年上の美人お姉さん系までいるじゃない。この……、女たらし。ってそういえば彼からあの夏祭りのすぐあとにメール来てたような……? あ、私が返してないだけじゃうああ、気遣いしてるじゃない。 「お姉様? 着きましたよ?」 「……ハッ!」 「むふふ。今、にーちゃんのこと考えてたでしょっ?」 「それは、上着の上に下着を着るくらいありえないことね」 「またまた、そんなこと言っちゃって。まぁにーちゃんほど格好良い人が気にならないわけないですって。照れなくたっていいのにっ」 「照れてないし」 「はいはいツンデレツンデレー」 「デレないし」 「今更、冷静に装ったって手遅れですよっ? かっこわらい、かっこわるい」 「いいから、中に入りましょう」 「お姉様って意外と態度に出やすいですよねっ」
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