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久方ぶりに訪れた筈なのに、ここで彼とともに過ごした日々を昨日のことのように感じてしまうのは何故かしら。
けれど、そのような気持ちよりも強く、違和感が私の肌を撫で付ける。
数日間、換気が全くされていなかったのか、淀んだ生温い空気が漂っていて、気持ち悪い。不快感が重くのしかかるように心に侵食し、それが不安感へと変化する。
彼は、今、どうしているのだろうか? ふと、脳裏に浮かんだ不安に突き動かされ、靴を脱ぎ捨て部屋に上がり込み、辺りを見渡した。
部屋は綺麗だった。整理整頓がきちんとこなされている。ただ、異様に清潔感漂う部屋の様相とミスマッチな淀んだ空気が、正体不明の不気味さを醸し出しているのが気に掛かる。
部屋に彼の姿はない。
「お姉様……? にーちゃんは」
「御覧の通りよ」
「え、でも綺麗好きのにーちゃんが部屋だけ綺麗にして換気を忘れる筈がないじゃないですかーっ」
「ですか」
「ですよっ」
「そうだ」
すっかり便利器具の存在を忘れていた私は、鞄の中をごそごそとまさぐって、彼と色違いの真っ白な携帯電話を取り出した。
使用頻度が少なすぎる電話帳から彼の電話番号を引っ張り出し、通話ボタンを押して携帯電話を耳に当てた。
しかし、コール音が虚しく木霊するだけで、彼が電話に出ることはなかった。
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