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「え、どうしたんですかっ。急に」
けれど、私は足掻こうと思う。空が攫われたと決め付け、その犯人がこの街に住む人間だと盲信して。
「あの、聞いてますかっ? ませんよねっ?」
「早速、準備しましょう」
「はいっ?」
「ああ、そういえばここに居たんだったわね。お兄さんはそのうちフラッと帰ってくるだろうから、心配しないで帰りなさい」
「え、いやでもこれ」
「帰りなさい」
「……」
「任せなさい」
「わかり、ました」
気圧されて、渋々と頷く愛美ちゃんを促し、私たちは家から出た。
愛美ちゃんはきっと訳が分からないだろうけど、私自身訳が分からないから問題ない。
鍵を掛けて、薄汚れた扉を一瞥し、踵を返した。
次、ここに来るときは空と一緒に。誓いのような決意を胸に、私たちは遠峰家を後にした。
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