第三章:悪意の理由は善意

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◇ ◇ ◇ 「久しぶりに、走る、と……キ、ツい」  身支度に手間取り、急いで教室に駆け込んだ直後には授業開始のチャイムが鳴った。  頬を滴る汗を腕で拭いながら、のそのそと席に向かう。クラスメイトの視線を一身に浴び、気恥ずかしさで思わず愛想笑いを浮かべてしまう。 「あはは、あっつー……」  パタパタと手で扇ぎつつ椅子を引き、辺りを窺いながら席に着いた。  視線、未だ冷め止まぬ。計38人分の熱い双眸に蒸し焼きにされる錯覚を覚える。見世物じゃねーぞ。  抗議の声を内心で上げ、ただひたすら教師の到着を待つのは辛い。何故に今日に限って教師が遅刻するのか。  待てども待てども、来る気配すら一向に感じさせない英語の教師の欠席が知らされたのは、それから30分も後だった。
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