第三章:悪意の理由は善意

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 引っこ抜かれる根元からごっそりと。毛、が、抜、け、る! 「いったぁぁぁぁ!?」  なに、この子怖い。いきなり何をしでかしてやがるのでしょうこの阿呆は。え、ちょっと本当に。笑えない。冗談で済まない。ちょっと泣いた。収穫祭じゃないんだから。農家の人だって大地の恵みに感謝してるから。いや、まぁ感謝したって抜いちゃいけないけどさ。  頭おかしいんじゃないの! 「ごめんなさい!」  じゃ、ねーよ! なんで凶行に及ん……、及んえぇ?  逃げた?  うわ、逃げた!  脱兎の如く駆け出した彼女に対して、頭を抑えてうずくまっていたため追い駆けることも出来ずに、闇に消えていく後ろ姿を茫然と見送った。  やがて足音も消え、夜闇の静寂に包まれた時、彼女の真意に気付いてニヤリと口元が醜く歪んだ。
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