第三章:悪意の理由は善意

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 目を剥いた。  どうして君がここにいるの? あれ? どうして君は学校にいたの?  あれ、え、どういうこと?  だって、さっき一緒に帰ってたじゃない。  逃げ出したんじゃなかったの?  それじゃあ、さっきの空くんは……。 「後ろから来るぞ、気を付けろ!」  と、後ろからの声が聞こえたのと同時に後頭部を強打されたと気付いたのは、勢いよく顔から床にぶつかってから抑え付けるように組み伏せられてからだった。 「うわ、目の前に僕がいる」  縄でベッドに繋がれた空くんが露骨に顔を顰めながら呟く。その言葉の真偽を確かめようと、唯一身動きの取れる首を後ろに捻った。  そこには空くんの言葉通り、空くんがいた。暗い目をした恐い空くん。今、この場には空くんが二人いる。 「なんで!? 髪はウィッグじゃなかったじゃない! あの時みたいに変装した相沢さんじゃないんでしょ!? 知ってるのよ、私。空くんに助けてもらったあの日から、ずっと……ずっと空くんのこと見てたんだから! だから、だから。あんたは誰なの! わけわかんない!」
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