第一章:鏡の中の鏡

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「でさ、昼休みのあの件だけど、どう?」  同日放課後。昼休みはあの事件……ううっ、思い出すだけで皮膚が粟立つ。あれのおかげでうやむやになってしまった例の件のことを宙が尋ねてきた。 「あー、うん。別にいいけどさ、なんで?」  僕の問いを聞いた宙は顔を俯かせたあと、怖ず怖ずと伏し目がちに切り出した。 「興味本意、というか気になることがあって、ね。それに暇だし。無理にとは言わないんだけど」  おそらく滅多に使わないのであろう取り繕うような口調が、やけに気に掛かって僕の目がぱちくりと瞬きを繰り返す。それに気付いた宙は、気まずそうな表情を浮かべてぽりぽりと頬を掻いた。  宙の態度に少し疑問を抱いたが断る理由もないしな。 「まぁ別に構わないけど」 「そうか、ありがとう」  許可を得た宙は仰々しく頭を下げると、自分の席まで戻り鞄を引っつかんで再び僕の席までやって来た。 「じゃ、行こう」  同じ顔をした男の元へ一直線に向かう転校生の行動は、勿論のこと教室内の注目をさらってしまう。  集う視線に居心地の悪さと、むず痒さを感じた僕は思わず顔をしかめる。こっち見んな!僕の羞恥心が久々にウェイクアップした。小学校の頃、好きな女の子に喋り掛けたら同級生に冷やかされた、あの時以来ずっと眠り込んでいたからなー。  ああ、もう。不思議そうな顔で覗き込むな、宙。そしてそれを見てひそひそと話し合うな、野次馬予備軍。  あー、あー、こっち見んな!
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