第一章:鏡の中の鏡

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 退院直後になかなかハードなイベントだと思った。あの後、お巡りさんがサイレン響かせ参上し、現場に居合わせた僕とチクリ魔(この野郎! 女性だけど野郎!)を事情聴取という名目で警察署まで誘拐した。そしてお決まりの如く、尋問……いや、事情聴取で僕らをこってり絞って下さいました。  あの時は、上の空で空返事ばかりしていたので長くなってしまったのだ。事情聴取どころじゃなかった僕の心境も察して欲しい。  両親がいないことで訝しがられたり、精神病院通いで危険人物なのではないかと疑われたり、本当に色々と大変だった。  後になって、僕が六年前のあの事件の被害者の家族であると判明し、なんとか解放された次第である。  空はもう茜色に染まっていて、烏が鳴いていてもおかしくない時間になっていた。  今日は本当に災難だった。何も出来ずに一日を終えようとしている。不幸は続くものだということを改めて思い知った。  警察署からの見知らぬ帰り道に四苦八苦しながら、家に着いた頃には既に日が暮れていた。  不幸だ。
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