序章:鏡に向かってこんにちは

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 転校生への質問コーナーといえば、割と定番だろう。しかし、しかしだ。何故在校生たる僕まで質問……もとい尋問されているのだ。  ええ、理由は重々承知していますけどね。 「お二人は兄妹なんですか?」 「「違います。ドッペルゲンガーです」」 「お二人は双子なんですか?」 「「違います。ドッペルゲンガーです」」 「お二人はドッペルゲンガーですか?」 「「違いない。ドッペルゲンガーです」」 「息ピッタリですね」 「「誰がこんな奴と!」」  尋問タイム終了。この素敵な数分間の間で、僕と彼女の友好度は世界恐慌も真っ青の下がり幅を記録した。  うわ、目茶苦茶こっち睨んでる。貴方のせいで無駄な時間取られたじゃない、って目してるよ。  こっちだって君のせいで家に帰る時間が遅れちまったんだよ。と対抗してみるが、人を射殺せそうな視線に思わず萎縮してしまう。  どうやら、僕と彼女はどうやっても相入れることはなさそうだ。 「「怠い」」  僕と相沢(ドッペルさん)が意図せず口を揃えて呟いた。  僕と相沢の脳内が見えない電子回路で繋がっているのか、それとも以心伝心しているのかと疑いたくなるくらい、言葉が重なる。なんだ、こいつら気持ち悪い、と客観的に見てみた。  それから、僕らは二人っきりで閑散とした校舎を徘徊しているのだが、別に甘酸っぱい青春を謳歌しているわけではない。  なにをとち狂ったのか担任が僕に相沢の学校案内をしろとおっしゃった。  権力に屈した僕は不承不承その任に就くことになったのだが……、そこでさっきの発言である。 「なぁ、折角僕がわざわざ貴重な時間を浪費してまで案内してやってるのに、それはないだろう」  ちょっとだけ、声に怒気を含めてみる。虚空を見上げていた彼女の瞳がこちらに向けられた。
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