第一章:鏡の中の鏡

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「「あははは」」  僕の左手が解放されると同時にどちらともなく笑いだす。濁った空気を吹き飛ばすように、淀みない友好関係になるために。  劇的に刺激的、非日常が僕らの日常。鏡合わせに映る僕らは紛うこと無きドッペルゲンガー。  外身も中身も同じように作られたのだから、行動も思考もまったく同じ。  互いに、似合わない爽やかな笑顔を浮かべて、右手を持ち上げる。  お手手の皺と皺を合わせて幸せ、つまりは互いに重ね合わせて仲良く握手。  ぶんぶんと子供みたいに繋いだ手を目一杯振りながら、鏡を覗き込んで喋るのと同様に二つの唇が同じ言葉を形作る。 「「改めて、これからよろしく――」」 「「するつもりはないけど」」
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