第二章:好意と憎悪は紙一重

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「あ、お茶でもどうぞ」 「にーちゃん、ありがとっ」 「あぁ、ありがとう空」 「うむ、ご苦労である」 「「「「…………」」」」  なんだろう、この状況。リビングに出来上がる、魔の三角形(フロリアントライアングル)、部屋の隅に追いやられ、給仕係と化した僕。  えっと、スマートな対応が求められているんだろうか? もし、そうなら僕のプライドにかけて答えざるを得ない。 「番号札一番でお待ちのお客様。至急窓口までお越し下さい」 「あ、私」  速やかに自室へと移動した僕のあとに続いて、宙がとことことついてくる。あ、なんか従順な宙って新鮮。  お互いに腰を下ろして一休み。 「「何故、僕の家にいる」」 「……と、貴方は尋ねる」  いや、別にそういうのいらないから。 「で、ホントに何の用? なんにもないんだったら、早く帰って欲しいんだけど。ほら、病み上がりだしあとの二人もとっとと追い払いたいんだ」 「酷い言い草ね。私は貴方が心配で、帰ってくるのを健気に待っていただけなのに……」 「人の家に不法侵入してか?」 「あら、心外ね? 不法侵入なんかしてないわ。ちょっとドアノブに針金を突っ込んで気持ちいいことをしただけよ?」 「意味が分からない。ピッキングするな! そしてうちの防犯設備はどうなってんだ!」 「セコム……しないとね」 「はぁ……、もういいよ。居間に戻って」 「あら、そう? それじゃあ我が家だと思ってくつろぐわね?」  宙は妖しげな微笑を浮かべながら、腰を上げると、早々と僕のもとから立ち去った。もう、駄目だ。宙は放っておこう。触れぬが仏だ。一人目でこんなに消耗していたら、あとの二人をとても追い返せるとは思えない。  洩れそうになった溜め息を、喉にお茶を流し込むことで飲み込む。これ以上、僕の幸せに出張されると流石に不味い。お先真っ暗だ。 「番号札二番でお待ちのお客様。窓口までお越し下さい」  さぁ、二回戦開始だ。
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