第二章:好意と憎悪は紙一重

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「これ、空が休んでいた分のノート」 「あ、どうも」  積み上げられたかなりの分量のノートに頬が引きつるのを感じつつ、受け取る。  続いて、宙はごそごそと鞄を漁ると、綺麗に纏められたファイルを二枚取り出した。 「これが今まで溜まっていた手紙と夏休みの宿題」 「これはこれは、全然欲しくもない物を纏めてもらってありがとうございます」 「いいえ。私は空の“クラスメート”ですから」  澄ました調子で返す宙はまだまだ不機嫌なようである。クラスメートより友達と言った方がよかったのかもしれない。 「そうそう、明日は大掃除や集会があるから必ず来るように、と言っていたわ。あと成績表も返ってくるそうよ」 「行きたくないなぁ」  いつの間にか、そんな時期になっていたとは全然気が付かなかった。夏休みは学校に行かなくていいから好きだけど、宿題とか成績表には対面したくないね。 「最後に、その腕じゃ家事なんて出来ないでしょう?」 「ん? あ、ああ……。まぁ、別に家事っていうほど大それたことはしてないけど……」  僕の左手は未だに包帯でぐるぐる巻きで、日常生活をこなせるほどの回復はしていない。それもそのはず。一ヶ月以上前には左手に風穴が空いていたのだ、穴は塞がったものの、そうそう元通りとはいかない。間違いなく握力が下がっているだろうから、僕のひ弱さに磨きがかかるのが凄く嫌である。 「で、それが何?」 「だから、夏休みの間は私が貴方のお世話をさせてもらおうかと思って」  宙は平然とそう言ってのけた。  ……は?  え……、お世話? 「えーっと、宙さん? 今、なんとおっしゃいました?」 「だから、夏休みの間、私が貴方の起床から就寝まで、この家の家事全般をするということよ」 「な、なんだってー!」  慌ただしい夏休みが始まることを宣告されたようである。  もう、僕のことは放っておいてくれ。
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