第二章:好意と憎悪は紙一重

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 結局、それから三日間。外出なしに惰性的に過ごした。宙もすっかりうちの勝手を知ってしまい、我が家の如く過ごしている。最早、それについて言及することが憚られるほどだ。  閑話休題。籠もりっきりは良くないということで妹を無理矢理連れ出すことになった。  とは言うものの、行き先などまったく考えていなかったことに加えて、なんせ暑い。外出を提案したことに後悔の念を拭えない。  ジリジリと日に焼かれるのを、肌がひしひしと感じ取っている。ああ、溶ける。暑い、怠い、帰りたい。 「あっつぃ……」 「「……ねぇ」」  三者共々、地面にへたりこみそうだ。だけど、アスファルトはもっと暑そうだ。倒れこんだりなどすれば、そのまま蒸し焼きにされかねない。 「水、水……」 「にーちゃん、喉渇いたぁ……」 「水、水……プール?」 「え」 「空、プールに行きましょう」 「ええ?」  プールかぁ、と呟いてから、ぼーっと視線を泳がせて考えてみた。青い空、白い雲、夏のプール。あれ、なんか違う?  青い空、白い砂浜、押しては返す波、常夏の海。おぉ、これだ。しっくりくる。 「どうせなら海にしよう」 「……海?」 「ああ、海だ」  こう、ぷかーっと海に漂っていたいね、うん。そう、海月。海月のようにぼんやりと過ごしたい。 「それじゃ、行こう」 「準備は?」 「現地で購入しよう。今から家に戻るのも煩わしいし」 「無計画ね」 「僕はフィーリングで生きてるからね」  テストの解答もだいたいフィーリングだぜぃ。あははは、笑いごとじゃねーよ。 「ってことで妹よ、海に行くぞ」 「え……海?」 「大丈夫、大丈夫。ナンパされたら守ってやるから。……投石して」 「う……ん。じゃ、じゃあ行こっかな。にーちゃんをあたしのないすばでーで悩殺してあげる!」 「そうだな」  ようやく見せた妹の笑顔に、思わず口元が緩んだ。やっぱり妹は笑顔じゃないとな。
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