第二章:好意と憎悪は紙一重

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「わぁ、海だ!」 「海だな」 「海ね」  バスに揺られること約一時間。僕らは地元の海に到着した。寂れたバス停に降り立つと、塩の強い匂いがべとついた風が運ばれてきた。道路から見える景色は白い砂浜とざぁざぁと波が揺らめく海が一望出来る。 「じゃあ各自必要なものを購入して着替え次第、あそこに見える海の家に集合ということで」 「わかったわ」 「……にーちゃん」 「宙、妹も一緒に頼める?」 「ええ、構わないわよ」 「それじゃあよろしく」  同性同士仲良くやってもらえると、こちらとしては色々助かる。なんだかんだで宙は義理堅い性格だし、任せておいて構わないだろう。こうして快諾してくれたわけだし。  先に妹を連れ立って歩きだした宙の背中をぼーっと見つめる。  うーん、僕より宙と姉妹の方が似合うんじゃないだろうか。ほら、身内贔屓かもしれないけど妹は割と可愛らしい顔立ちをしてるし、宙は陰性の美人ってな感じだから、姉妹揃って美少女! みたいな。  あ、でも宙にも妹が居たんだっけ。僕をぶっ刺したちょっとデンジャラスな妹さんが。そうなると、あの日以来、妹との関係が稀薄になった僕よりも宙の方が長男長女歴が長いわけだから、お姉さんが板に付いているのも当たり前ってことか。  考えが脱線している間に、宙達の姿は遠くなっていた。熱された砂浜を踏み締めて海の家に向かっている。そういえば、水着とか買わないといけないから、いずれにせよ一度海の家に行かないといけないのか。失念してた。 「出費がかさみそうだなぁ」  今月は厳しくなりそうだ、と内心苦笑いをしながら、宙達の背中を追って行った。
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