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「あー、疲れた」
「変態撲滅に身を捧げた充実感満載ね」
「楽しかったねっ!」
三者三様の感想を呟きながら、僕達は無料で提供されるお冷やをちびちびと飲んでいた。
結局、あのまま一時間ほど三人でビーチボールを使って戯れていた。いや、的当て、もしくは虐めと言った方が適切か。
ビーチボールだから、そこまで痛くはないのだが、二人の謎の連携プレイに息を着く間もなくボコボコにされ、海原を駆け回った。水を掻いて走るのは相当負担がかかるものだ。今も両膝がガクガクと景気良さげに笑っている。
ひとしきり騒いだのち、疲労の他に腹の虫が鳴いたこともあり、海の家で昼食を済ませることとなり、三人分のカレーを頼んだところで、現在に至る。
「宙もなんだかんだで結構はしゃいでたな」
「なんのことかしら?」
宙はこめかみに小さな皺を作り、僕を憎々しげに睨んだ。聞き捨てならない、とその仏頂面に威圧感を漂わせる。
おそらく子供扱いされるのが気に食わないのだろう。今にも噛み付きそうだ。
おおぅ……、と気圧されたところで「お待ちどう」と、バイトの店員と思われる大学生ぐらいの日焼けした男が、ジロジロと品定めをするような視線を宙と妹に向けながら三人分のカレーを机に並べた。
その下卑た視線を連れに向けられるのが不快で、クラスで爬虫類みたいと称されているこの双眼でギョロッと男を睨み付けた。
すると男は僕の視線に少しおののきつつも、女性二人に最上の笑顔を浮かべて「なにかあればどうぞ」と告げると、そそくさと仕事に戻っていった。店に入った直後、僕には無愛想この上なかった癖に。分かりやすい男め。
「ふふ……」
沸々と怒り出していると、宙が忍び笑いを漏らすので、眉をひそめながら宙へと視線を向けた。
そんな僕を見て、宙は擽ったそうにして、クスクスとまたひっそりと笑う。
宙のその態度に若干苛つきながら、半ば八つ当たりのような調子で宙に忍び笑いの理由を尋ねた。
「なんなの?」
「クスッ……、貴方って案外独占欲が強いのね」
宙は愉快そうにそれだけ言うと、それっきり何も言わずにカレーを食べ続けた。
僕はその様子に釈然としないままカレーを掻き込んだのだった。
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