第二章:好意と憎悪は紙一重

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 砂浜は暑い、いや熱い。  太陽の熱気を日中ずっと受けているわけだから、そりゃもう熱気をたんまり溜め込んでいるわけで。  素足で触れると、熱したフライパンの上に立っているのではないかと思えるほどだ。  まぁ、つまり何が言いたいのかと言うと、そんな砂に埋められたらとても大変だということだ。 「暑い、熱い、厚い!」  僕の体は首から上を除くと全て砂の中に埋まってしまっていて、身動きが取れない。  おまけに肌がヒリヒリして火傷っぽいし、額から汗が滝のように流れだしている。  そんな僕の姿をニヤニヤと眺めながら、宙と妹はビーチパラソルの下でかき氷を食べていた。 「やっぱりかき氷は夏の風物詩ね」 「美味しいですねー」  以前はあれほど険悪だった二人は休戦したのか、そこまで悪くない。友達とまではいかないが、知り合いレベルの会話をこなすようになっている。というか、早く僕を解放して欲しいんだけど。なんだか、頭がくらくらしてきた。熱中症みたいだ。 「なぁ宙、そろそろさ……」 「なにかしら? ……ああ、かき氷が欲しいのね? ほら、あーん」  僕の言葉へ覆い被せるようにそう言うと、僕の口元に宇治金時味のかき氷を乗せたスプーンを差し出す。  が、それは僕が届かない絶妙な位置で制止する。本来の目的はこちらじゃないけど、文字通り眼前に餌をチラつかせられてお預けを食らった犬のような気分に陥った。恨みがましい視線を向けると宙は肩を竦め、結局かき氷を自分で食べた。  畜生、弄びやがって。と怒り心頭でプルプル震えだしたところで、三人組の男たちがこちらに歩み寄って来た。  しかも、そのうち二人は学校でよく見る顔で、もう一人は今日見たばかりだ。 「よお、相沢」 「うわ、連れの子も可愛いな」 「な、俺の言った通りだろ?」  明らかにナンパ目的であろう男たちは、ホストばりの髪型のタラちゃん、その腰巾着のイクラちゃん、海の家にいた日焼け大学生の三人だった。
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