第一章:鏡の中の鏡

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「「あー、混んでるなぁ」」  口を揃えてがっくり。学生食堂、略して学食内はその許容量を越えて人で溢れ返っていた。  よって、必然的に僕と宙は学食の入り口付近で順番待ちをすることになってしまっている。  かれこれ五分程待っているのだがいっこうに進む気配がなく、券売機の姿形を拝むどころか、学食内すらろくに見渡すことが出来ない有様である。牛歩の歩み以下だ。  タイミング悪かったな。んー、どうしようか。この調子だとのんびり昼食を取ることは出来なさそうだし、今更購買に行ってもパンは残っていないだろう。 「よし、諦めよう」 「は?」  宙は意表を突かれたのと唖然とする様を混ぜ合わせたような表情を浮かべるが、僕はそれを苦笑いで軽く逸らし、宙の手を引いて列から離れる。 「わっ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!」  狼狽の色を隠さない表情がやけに可愛らしいと不覚にも脊髄反射。おい、脊髄。職務怠慢しやがったせいで自分と同じ顔を可愛いとか言うナルシシズムが発現しちまったじゃねぇか! はぁ……、自己嫌悪、自己嫌悪。
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