第二章:好意と憎悪は紙一重

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 泣きじゃくる妹、狼狽する僕。妹の泣き声に駆け付けた宙はわけの分からない状況に驚きながらも、ひとまず妹を連れてリビングを後にした。  この事態の原因らしき茶封筒と二人にされた僕は、妹が噎び泣く姿を見て動揺した余韻に呑まれていた。  いったいどういうことなんだ。どうして妹が泣いた。馬鹿みたいな元気だけが取り柄の妹が、あんな深刻な、絶望の淵に立たされたような表情を浮かべて泣いたのだ。  ぐるぐると渦巻いては消える言葉に掻き乱されて、僕は思考を手放した。  あー……。  ――取り敢えず、これ開けようか。思い立ったら即行動。手早く封を切り、中身を取り出す。  詰め込まれ過ぎて多少苦労したものの、無事に取り出した物を机に並べた。  丁寧に折られた便箋が一枚に、――――あ?  水着。  そう水着。  水着姿の妹。  水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が、水着姿の妹の写真が。  異常な光景に肌の上で虫が蠢いたような感覚に苛まれ、困惑と恐怖が表象する。  狂喜、狂気を感じる。  何故、何故妹の写真が? それにこれは昨日の海での様子だ。僕らは写真なんか撮ってないぞ。  悪寒と予感を感じながら、震える手で便箋を手に取る。  綺麗に四つ折りされたそれを開き恐る恐る内容に目を通した。 『○○さん、こんにちは。お義兄さんの家で過ごしているようですが、お元気そうでなによりです。昨日は○○さんの水着姿がとても麗しく、ついシャッターを切る手が止まらなくなってしまいました。それで現像致しましたので、是非○○さんにもと思い添付しました。  貴女をお迎えする日が待ち遠しくて仕方がありません。過ぎていく時間、一分一秒がとてもとても長く感じられます。その日まで、貴女を想って待ちたいと思います。健やかにお過ごしください。      私より、愛を込めて』  はぁ?
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