第二章:好意と憎悪は紙一重

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 やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ。 「君が妹さんを叔母さんに預けたのは正解であり、間違いでもある」  やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ。 「叔母さんはとてもいい人だ。だけど、叔母さんがどれだけ妹さんに優しく接しようとも、どれだけ理解したつもりでいようとも、その胸中は同じ悪意に呑まれたものにしか分からない」  やめてくれ、もうやめてくれ! 「仕方がないよ。君も幼かったし助けてくれる人もいなかった」  痒い、頭が痒い。 「自分だけで精一杯だろうさ」  痒い、痒い、痒い。 「だから、笑顔で自分を隠しながらも、救難信号を送っていた妹さんを突き放しても仕方のないことさ」  痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い。 「辛いだろうけど、聞きなさい! 君は妹さんのことを知ってあげないといけない! 助けてあげないといけない! それが家族よ! 昔は無理だったけれど、今の君になら出来る!」  痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い。 「センパイ、空くんを押さえて!」 「空くん、やめるんだ! 自分を傷付けたって何も変わりやしない!」 「ああ、もう! アタシとしたことが……。こんなんじゃ医者失格よ! センパイ! これを飲ませて!」  痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い……かゆい、…………かゆ、い。  ……か、ゆ、い。  …………かゆ……。 「……可哀相に。変わってあげられるなら、アタシが変わってやりたいわ」 「私もだ。どうして、こんな年端も行かない子ばかり……」  …………い。 「ごめんなさい、空」
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