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懐から果物ナイフを取り出して私はお義兄さんの心臓を一突きにしようと、私は地面を強く蹴っ、て、あ、れ……?
ガツンと、固い、石?
背後から後頭部を遠慮なく痛打され、果物ナイフを取り落として地面にもんどり打ち、くぐもった声を唇から垂れ流した。
平行感覚を失って立ち上がることもままならず、地面を転がって襲撃者の姿を見上げた。
え。
瞬 間 移 動 ?
夜の闇を上から黒で上塗りし直したような先の見えない目は、私を見ているのかすら怪しい。
おそろしく整った顔立ちと相まって異質の雰囲気を放っているのは、間違いなく先ほどまで愛美さんの前に立っていた筈のお義兄さんだった。
拳大の石を強く握った右腕が振り上げられる。私は悲しいかな生物としての性か顔を守るように手で庇い、自ら視界を塞いでしまう。
咄嗟に自らの過ちに気が付き、なんとか近寄らせまいとがむしゃらに蹴りを放つのだが、虚しく空を切るだけに終わる。
しかし、僅かに時間を稼ぐ程度には役立ったようで、私はフラつく身体に喝を入れて地面から跳ね起きた。
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