第二章:好意と憎悪は紙一重

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 背後からの足音、私は、振り返る。背後からは、は? お義兄さんが、細長い何かを、片手に、迫って、来ていて? さらに、背後から、お義兄さんが、お義兄さんが二人?  混乱が支配し、正常な判断が下せない。一人のお義兄さんが私の背中にその細長い何かを押し付けて、その刹那目眩がするほどの光が視界を舞った。  そして後追いで、焼け焦げたかと錯覚に囚われるほどの鋭い熱と衝撃が背中に走り、私が絶叫を上げる前にもう一人のお義兄さんが左手のナイフを私の左肩に強く突き立てて、髪を掴んで地面に押し倒した。  息が詰まり、苦痛に顔を歪める間もなくこめかみをお義兄さんに右手の石で殴られて、もう一人のお義兄さんが私の首に細長い何かを押し当てた。  空気が爆ぜる音が響くと同時に頭の中を針で刺されたような激痛が走って、急激な吐き気、気力を喪失。  顔の神経が麻痺したのか、涙や鼻水を垂れ流しながら私の身体は痙攣を起こすことしか出来ない。  ああ。  愛美さん。  あと少し。  あと少しで貴方は私のものになったのに。  残念だ。
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