第二章:好意と憎悪は紙一重

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◇ ◇ ◇ 「スタンガンなんて持ってたの?」  と、にーちゃんが呆れ気味にそう言うと、お兄ちゃんが、 「ナイフを振り回す人よりは可愛げがあると思うけど」  愉しそうに笑う。 「そんなことよりこれ、胸が苦しい」  お兄ちゃんはおもむろにシャツの首もとに手を突っ込んで、ごそごそとまさぐった。 「おいおい、慎んでくれよ」  にーちゃんは慌ててお兄ちゃんに背中を向けた。シュルシュルと衣擦れの音に、にーちゃんはどぎまぎして居心地が悪そうにしている。  やがて、お兄ちゃんは首もとから細長い包帯のような布を取り出すと、それを使って倒れこんでいるストーカー男を後ろ手に縛った。 「もういい?」 「いいけど、今裸」 「ばっ、おまっ!?」 「嘘だけど」 「……」  にーちゃんは深い溜め息を吐き出して、振り返りざまに血の付いた石を地面に放った。  頭から血を流し、口から泡を噴くストーカー男をジッと見つめ、うーんと唸りながら首をかしげた。
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