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(また夢かぁ…)
このみは夢で目が覚めた。
どこまでも落ちて行く…
そんな夢を子供の頃からよく見ていた。
鼓動は早く汗でパジャマは濡れていた。
この夢を見た後はいつも決まって眠れなくなる。
(2時…)
このみは汗を流しにシャワーを浴びると、スウエットを着込んで、ぶらりとコンビニまで出掛けて行った。
『このみ、どうしたの?』
コンビニ前で浮かない顔をしたこのみに仲間の麻美が声をかけた。
『ぅうん…なんでもない』
こんな日は気分が冴えなく、どこかに走りに行きたい気分になる。
『もしもし…裕紀?明日休みでしょ?これから走りに連れて行ってよ』
携帯で寝ていた裕紀を起こすと麻美達の輪に加わり裕紀を待った。
4歳年上の裕紀とは特別な関係ではなかった。
裕紀の走るスタイル、バイクのサウンド、風を切る走り…これらが、このみの感性に1番しっくりくる男だったから。
今は裕紀以外のタンデムシートに座ることはなかった。
20分程待って裕紀がやって来た。
『どこでもいから飛ばしてよ』
このみはそう言ってメットをかぶるとタンデムシートに跨がった。
『このみ、いくゼ!』
このみは裕紀の腰にしっかりと両手をまわすと二人を乗せたバイクはカン高い排気音と共に消えていった。
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