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悟が家に着くとちょうど電話がきた。
『もしもし…お兄さんでしょ?姉さんのお墓に花あげてくれたの…』
和恵の4つ年下の妹、芳恵からの電話だった。
和恵が亡くなる前はよく三人で遊びに行った。
しばらく疎遠だったが、最近和恵の墓参りで、ばったり会ってから、ちょくちょく芳恵から電話がくるようになった。
『これからお兄さんの所行ってもいい?』
『…あぁ』
気のない返事しかできない悟だった。
芳恵を見ていると和恵の面影があり、切ない気持ちになり辛かった。
1時間程して芳恵が来た。
芳恵は上がり込むなり冷蔵庫を開けて、やっぱりという呆れた顔をしてみせた。
『缶ビールと缶コーヒーしか入ってないじゃない?お兄さんちゃんとご飯食べてるの?』
『あぁ…』
『ホントに心配してるんだから…』
悟は軽く聞き流していたが、芳恵は悟への気持ちを抑え切れずに悟に背中に抱き着いた。
『いつまでも、お姉ちゃんの事引きずってないで…わたしだって…お兄さんのこと…ずっと想ってたんだから…』
悟は無言で芳恵の手を払い立ち上がると背を向けて言った。
『今日は帰ってくれないか?』
芳恵は涙ぐみながら部屋を飛び出していくと、悟は冷蔵庫から缶ビールを出して飲み干した。
(和恵…ごめんな…)
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