一章 嫉妬と笑顔

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 久世家への泊まり込みを初めてから最初の朝、俺は目覚まし時計の音で目を覚ますと同時に、かすかな違和感を覚えた。  いつもと寝床が違うからだろうか、首がいたいわ頭がぼーっとするわであまり寝起きが良いとは言えない。  俺は昨日のうちに運び込んでおいた制服に着替え、眠い目をこすりながら階下に降り、顔を洗う為に洗面所を目指す。  水をぶっかけながら豪快にバシャバシャと顔をこすると、ようやくぼんやりとしていた意識が覚醒してくる。  汚れをしっかりと洗い落としたところでそばにかけてあったハンドタオルを手に取り、水分を拭き取る。  そのタオルはすでに誰かが使った後らしく、使う前から少し湿っていた。  それから、さっぱりしたところでリビングに向かう。  リビングから見えるキッチンには小さな後ろ姿。  その背中に「おはよう」と声をかけると、彼女は朝食を作る手を一旦止め、こちらに振り返った。
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