一章 嫉妬と笑顔

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 エプロン姿の少女はなぜか頬を赤くしながら返事を返す。 「お、おはよ……兄ちゃん」  いつもとは違う朝。百合ちゃんの反応がなんだか微笑ましくて、俺は微笑を浮かべながら朝食の席についた。  それからまもなく、百合ちゃんがせっせと出来上がった朝食を運んでくる。  手伝おうかとも思ったのだが、それは野暮ってもんだろう。  俺と百合ちゃんの分の朝食を運び終えると、百合ちゃんは俺の隣に腰を下ろす。 「百合ちゃん、朝早いんだね」  朝食のメニューはハムエッグにトーストという簡素なものだが、それでも俺より三十分以上は早く起きているはずだ。  百合ちゃんはそれにコクリと頷き、『いただきます』と手を合わせてから朝食に箸をつける。  俺もそれに習ってハムエッグを口に運ぶと、すかさず感想を求められた。
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