一章 嫉妬と笑顔

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「どう……かな?」 「うん、今日のも美味しいね」  それはお世辞でもなんでもない素直な気持ち。  頬を赤らめる百合ちゃんはどこか千秋に似ているような気がする。 「なんかいいね、こういうのも」  家族団欒と言えばずっと風見家での食事が頭に入っていたけど、いつか俺にも恋人ができて、結婚することになったら、こんな感じなのだろうか。 「うちら、アレ……みたい」 「アレ?」  口をもごもごと動かす百合ちゃんの顔は火が出るんじゃないかと思わせるほどに赤く染まっている。 「その……し、しんこんさ――」 「はよーっす! ん? 百合、顔真っ赤だぞ。熱でもあんのか?」  と、そこでリビングのドアがスライドし、裕二が姿を表した。  心配して近づいて来る度に百合ちゃんの顔色は冷めていき、そして―― 「しねっ」 「なんでいきなり!?」  百合ちゃんの冷たい言葉が裕二の心臓を貫いた。
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