一章 嫉妬と笑顔

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「時に新山よ、なにやら面白い状況になっているそうではないか」 「……なんの話だ?」 「惚けるな。昨日から久世家に泊まりこんでいるのだろう?」  なんでこいつが知ってんだよ。  久世家に泊まりこむことになったのは当日になってからだし、比泉に情報が入る要素はないはずなんだけど…… 「久世の従姉妹と同棲生活か。どんな気分だ?」 「そんなんじゃねぇよ」  百合ちゃんは千秋と同じで妹みたいなもんだし、そんな風に意識はしていない。  比泉と話をしている間も時間は流れ、気づけば予鈴一分前、すでに二年二組のクラスメートは全員登校している。 「ふむ、俺は用事があるのでこれで失礼するぞ」  そう言って一人教室を去っていく比泉。  今いなくなったら遅刻扱いになっちまうと思うんだが……あいつは結局なにしに出て来たんだろう。  やがて、担任の時雨彩(しぐれあや)先生が教室に入って来たので、俺は未だに寝ている裕二を廊下に放り出してから自分の席に腰をおろした。
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