一章 嫉妬と笑顔

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「……なんで俺、学校にいるんだ」  出欠確認の後、教室前の廊下にて目を覚ました裕二の一言。 「朝起きて、リビングに顔出したところまでは覚えてんだけどさ、その後がさっぱり……」  どうやら睡眠中だけでなく、落胆中も自らの意識は遥か彼方へ飛んでいってしまっていたらしい。 「朝起きて、リビングに顔出して、それから……そうだ、百合になにか言われて……あれ、なにを言われたんだっけ。思い出せない」 「思い出せないってことは大したことじゃなかったんだろ。そろそろ予鈴が鳴るから授業の準備しといた方がいいぞ」  実際は裕二にとって百合ちゃんの一言は十分『大したこと』にカテゴライズされるレベルだったのだが、わざわざ古傷をえぐってやることもあるまい。
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