二章 刹那の一枚

2/12
前へ
/78ページ
次へ
 ………… 「――俺も好きだあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 「のわっ!?」  久世家での居候を始めて三日目の朝、裕二を起こしてやろうと肩を叩いた瞬間、上げられた奇声に思わず飛び退いてしまった。 「……あれ? 百合……は?」 「百合ちゃんならリビングだけど」 「もしかして夢……だったのか? クソっ、夢なら覚めないで欲しかった! なぜ起こした亮介ええぇぇぇぇっ!」 「とりあえず落ち着け」  そう言って錯乱する裕二の頭を一つ小突く。  よほど良い夢でも見ていたのだろうか。  良い夢なら覚めないで欲しいって気持ちはわからないでもないが、それで涙を流すのは流石に異常と言ってもいいと思う。 「あんまり時間に余裕もないから、とりあえず目ぇ覚まして降りて来いよ」  正直これ以上絡まれたくはなかったので、俺はそれだけ言い残して一人先にリビングに降りた。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

873人が本棚に入れています
本棚に追加