二章 刹那の一枚

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 授業の予鈴が鳴るや否や、比泉はいつも通り教室を抜け出して何処かへ歩いて行ってしまった。  あいつはどうやって単位を取っているのだろうか。謎だ。  ちなみに裕二はいつまで経っても降りてこなかった(恐らくもう一度夢を見る為に二度寝したのだろう)ので、家に放置して今日は百合ちゃんと二人での登校。  特に会話はなかったような気がする。よく覚えていない。  やがて予鈴のベルが鳴り、裕二と比泉の二人を欠いた状態で、二年二組の1日がスタートする。 「ねえ、亮介」 「ん?」  最初の授業、数学の担当教師が出欠の確認をしている中、隣の席に座る織原美鶴(おりはらみつる)に声をかけられた。 「千秋ちゃんから聞いたんですけど、久世裕二の家で寝泊まりをしているというのは本当なのですか?」 「あー、うん。まぁね」  美鶴の家は風見家の向かいなので、千秋や姉ちゃんともある程度の交流がある。  一週間も隠し通せるものではないと思ってはいたが、よりにもよって厄介なやつに知られてしまったものだ。
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