二章 刹那の一枚

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「亮介、お願いがあります」 「なんだよ」 「自首してください」 「手出してねえっての」  というか、手出す度胸なんざ持ち合わせてないさ。 「可愛い女の子と同棲生活。全国のクソ野郎共が羨むような状況で手を出さないなんて、亮介は同性愛者ですか。そうですか」 「なんでそこまで話が飛躍するかな。もう何人に同じこと言ったかわかったもんじゃないけど、百合ちゃんは妹みたいなもんなんだから、そういうことにはならないって」  美鶴は相変わらずの無表情のまま、『ふう』となぜか呆れたように息をもらす。 「これは千秋ちゃんについても言えることなのですが……『妹』と『妹みたいなもの』には大きな隔てりがあると、私はそう思いますよ」  美鶴の言いたいことはわかる。  千秋だって、一緒に育ってきたとは言っても、実際は血の繋がっていない赤の他人。  引き取られたとは言っても、戸籍上はなんの関わりもないので、付き合うことはもちろん、結婚だってできる。  でも、上手く言えないけど、それでもやっぱり、千秋は『妹』なんだよ。  百合ちゃんだって同じだ。  彼女を恋愛の対象として見たことなんか………………本当に、ない……のかな。
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