二章 刹那の一枚

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「…………ふう」  その日の昼休み、午前の授業を終え、HPバーの四分の一を消費してしまった俺は、体力回復の為に旧校舎の屋上を訪れていた。  屋上なら新校舎にもあるし、わざわざ渡り廊下を渡ってこちら側に来る理由もないので、この場所は基本的に人気がない。  今日も例外なく、俺以外の人間は見当たらない。  なぜ昼休みにそんな場所を訪れているのかといえば、その理由は手元にある百合ちゃんお手製の手作り弁当にある。  朝みたいに比泉辺りにからかわれるのは嫌なので、こうして人のいない場所を選んでやってきた―― 「――と、そんなところだろう?」 「人の心を読むなと何度言ったら……それとどっから湧いて出た」  逃亡虚しく、背後にはいつの間にやら比泉紫苑の姿。  俺はついさっきここに着いたばかりだ。  その背後から現れるってことはつまり、ずっと俺の後をついて来ていたってこと。  ほんと、本格的に怖いよこいつ。
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