二章 刹那の一枚

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 ちなみに二度寝した裕二は三時間目の半ば辺りに登校し、比泉もそのくらいの時間に一度戻ってきている。  裕二にはやはり『なぜ起こさなかったのか』と理不尽な文句を言われたが、俺はちゃんと起こしてやったんだから無視無視。  裕二の分の弁当は用意されていなかったので、昼休みに入るや否や、すぐにここまで走って来たのだが……相変わらず比泉のストーカースキルは計り知れない。 「それで、なんの用だよ」 「用がなければ共にいてはいけないのか?」 「いけないに決まってんだろ、気色わりぃ」 「ふっ、冗談だ」  こいつは冗談と本気の区別がつかないから厄介なんだ。 「実は新山に頼みがあってな」 「嫌だ」 「…………で、頼みというのは――」  スルーかこの野郎。 「久世百合の写真を撮ってきてほしいのだ」 「は? んなもん自分で撮ればいいだろ」  俺なんかより盗撮の天才である比泉が実行した方がいい写真が撮れるだろうに……意味がわからん。
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